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ISBN 978-4-9910759-3-3
B6版変形 168ページ
発行 リ・パブリック 2024年10月
(発行社のWEBサイトより)
《前号の刊行からはや3年。分刻みで埋まるカレンダーに沿って日々の仕事に追われたり、いくつかの企画が頓挫したりしているうちに、あっという間に月日が過ぎてしまった。社会や経済の情勢は確かに変化しているにもかかわらず、自分たちの歩きかたはあまり変わっていない。個人にも社会にもあそびがなくなり、徐々に窮屈になっているように感じられた。
そんな行き詰まりを胸に抱えながら、飛び立ったのはインドネシアのバリ島。鳥の目で地図を眺めて場所を選ぶのではなく、出会う人が新たな人へとつないでくれて、さまざまなつくり手と話した。つづく山形県大江町では、採集物を用いてインクをつくるデザイナーとともに、山へ分け入った。そして旅の締めくくりには、福岡県広川町で公開編集室を仕立て、一週間にわたる滞在制作を行った。出会った人たちの手つきに引っ張られて試行錯誤するうちに、自分たちのつくりかたもどんどんと変わっていった。
今号の特集は「つくりかたをかえる」。あらかじめ綿密な計画を練り上げるのではなく、ときに脇道に逸れながら進むこと。自分と相手との間に線を引くのではなく、渾然一体となって踊ること。出会ったものごとを織り込んで何かを一緒につくること。そんな身振りをたどることから、今号の歩みをはじめてみよう。》
――2024年 10月 白井瞭
●Feature1 バイクにのってどこまでも
ファブラボ世界会議Bali Fab Festが、インドネシア・バリ島で開催されたことをきっかけに、現地のDJやアーティストと交流を深めた編集部。話を聞いてみると、世界的なアーティストがこぞって訪れるバリでは、分野も領域も違う若いつくり手が、音楽を通してゆるやかにつながりながら、インディペンデントに活動しているらしい。友人たちの、ときにGojekで配車したバイクの後ろにまたがって、プリントメイカーやフードイベントプロデューサー、デザイナー、タトゥーアーティストなどを訪ねてまわった5日間の旅路。
●Feature2 山に入る日
山形を拠点に、採集物からインクをつくる研究「Foraged Colors」をはじめ、採集・デザイン・超特殊印刷を横断しながら、もののつくりかたをデザインする𠮷勝制作所。彼らを訪ねて、一緒に山へと分け入った。晩餐のためのきのこと、インクづくりに使えそうなキレイな色のもの、お茶になりそうな葉っぱを目掛けて、森をガサガサ歩く。彼らの足取りや身振りを真似ながら、採集者の目で世界を探ってみる。
●Feature3 色を見る、つくりかたをほどく
「色って自分でつくれるんだ」という衝撃を経て向かったのは、福岡県南部の筑後地方にある広川町。200年以上の歴史をもつ綿織物・久留米絣の産地だ。久留米絣といえば藍。でも世界の絣文化を見てみれば、周囲の環境から取り出した豊かな色の世界が今なお受け継がれている。茶栽培や酒造、和紙や木工など、小さなエリアに多くの産業が息づくこの産地だからこそ現れる色を求めて、一週間の滞在制作を行った。
●Feature4 漫画 : 将来の集落(香山哲)
最新刊『レタイトナイト』をはじめ、暮らすように旅をして、旅をするように暮らす独自の視点で物語を描く気鋭の漫画家、香山哲による連載コミック。今号では「コヨーテの釜」「プラスマイナス1」の短編2作を描き下ろし。現在の世界が何度も滅亡した後に人類が形成するかもしれない、さまざまな形の集落を描く。