柿内正午(著/文) ISBN　なし（リトルプレス） 新書判　160頁 発行　零貨店アカミミ 2021年に発表し好評だった哲学風エッセイが、読みやすさを向上させる改訂や一章ぶんの増補を加え、新書サイズの【増補版】となって再登場。 『プルーストを読む生活』の著者で、「町でいちばんの素人」を自称する会社員である著者が、自ら「会社員」であることを題材に思考を巡らしたエッセイ。「思考すること」を諦めないための思索の記録。 素人が哲学や政治や経済を語るという、本来まったく普通のことが、異様なことのように捉えられるのは非常におかしい。僕は素人として、いけしゃあしゃあと、生煮えの持論を振りかざしてみようと思う。あらゆるイズムで簡単にわかった気になることもできる限り避けながら、自分個人の生活から、これはしっくりくるなあという考えだけを頼りに、いったん自分で考えてみたことを、素人臭い手法で書き進めていこうと思う。この試みはまた、素人であることの肯定が、そのまま無思慮や専門知の軽視を意味するわけではないということの表明にもなるだろう。まず自分の手持ちの語彙で言葉にしてみないことには、より確度の高い知識へのアクセスもできないんじゃないか。 自分の頭で考えるというのは、自分に都合のいい世界観だけに従順な生徒根性でもなければ、自意識過剰で安易な逆張り精神でもない。なんかもっとよりよく生きたいなーという、それ自体はなんの変哲もない欲求から始めてみることなのだと、僕は考えている。 (「はじめに」より) ■著者プロフィール 柿内 正午　(かきない・しょうご) 会社員。「町でいちばんの素人」を自称し、文筆活動などを行う。著書に『プルーストを読む生活』(H.A.B)。